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日輪の遺産 / 浅田次郎 [本のこと。]


日輪の遺産 (講談社文庫)

日輪の遺産 (講談社文庫)

  • 作者: 浅田 次郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1997/07/14
  • メディア: 文庫


3/3に読了しました。
2011年の後半に、先に映画を観てからこの文庫を購入し、結果、半年くらいかけてじっくり読み進めて来ました。とにかく、映画での印象がずっと鮮明に記憶に残ったままだったので、映画化された小説などを読んでいるときにはいつもそうなんですが、小説の中の登場人物は映画で演じていたそれぞれの俳優さんたちの肖像とイメージを重ねながら動き出していて、活き活きとした物語の世界に惹きこまれていました。ただ、この映画化脚本と原作小説には舞台設定上、けっこう大幅な変更もあったので、先に観ていた映画版にはないオリジナル原作版のなかなか個性の強いキャラクターたちの(主に現代として描かれる部分の登場人物でした)それぞれの奮闘ぶりが新鮮で楽しめました。
映画でもほぼ原作に忠実だったパート、太平洋戦争終結の直前とその後のエピソードは、原作では真柴さんの手帳として登場していて、この辺りの設定は映像化しても伝わりにくいしストレートには描きにくい小説ならではの表現方法かもしれません。映画を観て魅了させられたのもその部分ではあったんですが、この虚実入り混じったエピソードのディテールはやはり小説で改めて確認していくとより一層深みと凄味がありました。この物語が世に出たのはずっと以前のことですが、2011年3月を経験してきた私たちにとっては、この小説が伝える、託している未来の姿は以前にも増して輪郭がはっきりとしている気もしました。
もう一つのパート、現代として描かれている部分はメジロパーマーの大逃げで勝った有馬記念がその時点ですので、これは第37回、1992年12月27日開催ということになります。となると、この時点の映像とかも映画でも見たかったんですが、そうなるとすでに現在とは世相も違っちゃっているし、このパートも戦後から見た近過去として現代とは別に描くという妙な比較になってくるんで、脚本上変えざるを得なかったのかもしれません。そしてここで登場する丹羽さんのちょっと問題ありなキャラクターが実に魅力的だったので、仕方ないんだけど全く映画で登場しないのが残念でなりません。この辺りの人物描写は他で幾つか読んだ浅田次郎氏の小説に通じるちょっと哀しくて人間臭い描き方のある意味では原点に近いもので、やはり自分はこのスタイルが好きです。
そしてこの小説に触れることが出来てよかったと、改めて感じました。
映画版もそうなんですが、この作品には多くの人が触れてほしいなぁと思います。
自分も、またいつか近いうちに、読み直してみたいと思っています。
余談ですが、小説の中では(おそらくはあえて)その名が登場しない1着メジロパーマーに続く2着馬はレガシーワールドでした。

日輪の遺産 特別版 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • メディア: DVD



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