最後の将軍 -徳川慶喜- / 司馬遼太郎 [本のこと。]
「胡蝶の夢」の松本良順とも縁の深かった慶喜将軍の物語として、幕末のひとつの側面が語られていますが、他の作品でも当然登場しているエピソードも多く、この小説でのもしかしたらいちばんの特別な部分は歴史の表舞台から姿を消して以降のひっそりとした余生のことなのかもしれないと思えました。
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胡蝶の夢 / 司馬遼太郎 [本のこと。]
放置が長引いておりました。
やっと更新久々にとりかかります。
花神に続き、蘭法医の物語、そしてこちらは幕府側のエピソードです。
松本良順の人物像に触れて改めてほれぼれしました。
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花神 / 司馬遼太郎 [本のこと。]
花神 上・中・下巻 全3巻セット (新潮文庫) [文庫] by 司馬 遼太郎 [文庫] by 司馬 遼太郎 [文庫] by 司馬 遼太郎 [文庫] by ...
- 作者:
- 出版社/メーカー:
- 発売日: 1976
- メディア: 文庫
まただいぶ更新が滞ってしまいました。
何とか少しでも記録を進めておきたいんで、ちょっとだけ。
以前、学生の頃に読んでいたときにいかに見えているものが浅かったか、でも半分無意識のうちに、現在自分が”仕事”に向き合うにあたり、心がけたいと日々感じている基盤の部分をこの作品から学んでいたんだぁなと改めて気づきました。
物語としてもちろん大好きなひとつですが、それ以上に大切な作品に出合い直しました。
リップヴァンウィンクルの花嫁 / 岩井俊二 [本のこと。]
普段よく立ち寄る津田沼駅前の書店で、ふと見かけたのは確か冬。
その時点で、この作品が映画になるのかどうか(きっと映画になるだろうけど、あくまで企画原案みたいなものかも)、公開がいつなのかは不明でしたが、読んでおきたくなり、手にとりました。
途中まで読んでいて、映画を観てから読み終えたので、たぶんその影響が随分あったと思います。
小説では基本的に主人公である七海の主観で描かれている部分もあって、その視点では見過ごしているはずの様々な事象も映画としてははっきりと映っています。
逆に、小説の中でこそ、七海の目に映る真白への思いのまっすぐさもより純度の高いものとして感じられたりもします。
もともと、岩井俊二監督の作品に文学の雰囲気が含まれているんですが、文章に置き換わることで感じ取れる部分はまた少しニュアンスが変わっていたりするのが面白いです。
過去に「Love Letter」や「スワロウテイル」を小説として読んだ時以上に、今回は映画の配役がキャラクターそのものに重なって見えました。
十一番目の志士 / 司馬遼太郎 [本のこと。]
「世に棲む日日」を読了して、すぐに読み始めました。
高杉晋作のエピソードのスピンオフのような作品といえます。
長州藩の天堂晋助はもしかしたらこういう人物が居たのかもしれない、という凄腕の剣客。
幕末の動乱期の血なまぐさい舞台で、実際には様々な藩だったり、場合によっては幕府にも存在したかもしれない無名の人々、その多くは、どんな出自なのかも不明であろうし、どちらかといえば卑賎な身の上から煙のように出現し、いつの間にか姿が消えている、でもその行動はまるで時代が操っているかのように求められる舞台で自らに与えられた役割を全うしていく、そのなんとも無常な余韻が新鮮でした。
大好きな作品「胡蝶の夢」にも近い感覚がありますが、その前にもう少し長州藩の縁をたどりたいと思います。
次は「花神」です。
赤めだか / 立川談春 [本のこと。]
2015年の年末、TVドラマ化が決まったことで、この本が文庫化されました。
以前、志らくさんの「雨ン中の、らくだ」を読んでいたので、この物語の頃の家元のお話はなんとなく知っているかのような感じがありました。
本当なら、こちらの方が先に本になっています。
談春さんの自伝的な内容で、その中で語られる家元・談志師匠の本当に魅力的な素顔。
志らくさんの物語と一致している部分もあり、見えているものが少しだけ異なっている箇所もあり、面白かったです。談春さんは、築地に修行に行ったクチですし。
先にこの原作を読み、TVドラマを観ました。
感慨深かったです。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 / 村上春樹 [本のこと。]
2016年のこの時点で発表されている長編作品の最新刊が文庫になりました。
「巡礼の年」というのがリストのピアノ曲だというのを自分はこの作品で知り、探して音源を手に入れました。
Liszt: Annees de pelerinage (Complete recording)
- アーティスト: Franz Liszt,Lazar Berman
- 出版社/メーカー: Deutsche Grammphon
- 発売日: 2003/04/08
- メディア: CD
主人公のつくるくんが、かつて友人だった色彩を持つ人たちを訪ねていく、その移動・旅の物語なんですが、ふと考えてみたら、最近の村上春樹作品、どんどん移動していくエピソードの方がちょっと軽めというか短めの作品で、一か所に留まり始めると長編が延々長くなっていく気がします。同じ場所に留まることは辛抱強く待ち続けることにもつながり、よりハードボイルド色が強まっていく気もしています。
つくるくんにとって、以前所属していた5人組の仲間以上により心を通わせ、そして彼の前から去ってしまう灰田くんの語る父の出会った人のエピソードはなんだか映画的なシーンに感じられて印象深かったです。
タグ:村上春樹
世に棲む日日 / 司馬遼太郎 [本のこと。]
記事の更新順序が少し入れ替わっていますが、この2016年夏の終わりから、なぜかふと、学生の頃以来の司馬遼太郎先生の幕末ものに着手し始めました。社会人になってからも、数冊読みましたが、現在の次が早く読みたいという感覚で進めているのは久しぶりです。
この作品は、長州藩、吉田松陰と高杉晋作の物語。
学生の時分、雰囲気だけで理解していたのとやはりずいぶん受け止める感触が違いました。
それでも読んでいて自分が鼓舞されていくのが新鮮で、自然と心持ちもなんだか若々しくなってきます。改めて出会い直せて、よかったです。
次は「十一番目の志士」です。
アクアマリンの神殿 / 海堂尊 [本のこと。]
桜宮サーガも、いよいよ埋めるべきエピソードがほぼ補完され、収束に近づいてきたみたいです。
この作品は「モルフェウスの領域」の後日談となる作品だったんですが、まさかの青春物語として展開するとは。
若気の至りで楽しい部分もあるんですが、個人的には「モルフェウス」の静謐な世界が好きだったので、勝手にイメージしていたものとあまりに異なるテイストだったので、ちょっと戸惑いました。後から考えれば、これはその先につながる「医学のたまご」に近いのかもしれないなと、思い当たりました。少し納得です。
新刊の方では、海堂さんはもう違う領域に着手し始めてしまっているので、桜宮サーガ方面はもしかしたらこの先は・・・・と、あと「スリジエ」の文庫化がまだでした。
こっちが楽しみです。
1Q84 / 村上春樹 [本のこと。]
1Q84 BOOK1-3 文庫 全6巻 完結セット (新潮文庫)
- 作者: 村上 春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/05/28
- メディア: 文庫
村上春樹氏のこれまでの長編小説のなかで、現時点で最も長い作品です。
圧倒的でした。
ふたつの物語が並行して語られる、長編で何度も用いられている形でこの物語も進行していきますが、今回はそのふたつの世界がすぐそばで、お互いにはじめからもう一つの物語の風景が見え隠れするような位置関係になっていて、そこで生じる緊張感が新鮮でした。どちらかといえば天吾くんのエピソードが穏やかでゆったりとしたパートで青豆さんのパートが危険に満ちたより不条理が前面に出たパートのように思えたんですが、不穏な状況はすぐに天吾くんに及んでふたつのエピソードが密接に関係しあっているのがかなり冒頭に近い部分で明らかになっていました。集団「さきがけ」の存在、小説「空気さなぎ」という不思議な物語、そして明確なリンクとして登場する牛河さんという人物など、もしかしたらこの先に発表される別の小説でも改めて描かれるかもしれない様々な要素が複雑な混沌の状況にいくつも含まれていて、読んでいて実に様々な感情がわいてきました。新刊として発表されたときにも読んでいましたが、改めて今、読み返してみて、よりこの物語を肯定的にとらえて読み終えたのが新たな発見でした。