「陰日向に咲く」 [cinema]
3月16日に鑑賞です。記事のupが少し遅れ気味です。
劇団ひとり氏の原作小説が以前から話題になっていて気になりつつも読まないまま映画を先に観る形になりました。
小説などが原作の映画化作品は自分はこのパターンが結構多くて、映画を通してその物語に触れ、あとから小説であったりマンガであったりを再確認していくことが多いです。逆の場合、ついどうしても“答え合わせ”になってしまい、往々にして残念な感想になってしまうことも多いような気がするので、あまりそれがない点ではこのパターンが自分には向いているようです。
物語は並行して紹介される複数のエピソードが関連しあう群像劇として構成されている本来はオムニバスのものなので、映画でのこうした表現がうまく活きています。出てくるキャラクターがちょっとずつダメだったり、問題があったりという部分はとても親近感があって、つい感情移入してしまいました。原作者の劇団ひとり氏はそもそもきっかけではコントネタとしてこの物語を創出したということらしいんですが、がんばって小説を、というスタンスじゃなかったからこそ成立しているよさがあるように思えました。脚本の金子ありささんも今回は初稿を仕上げるのに通常の3倍かかったというほど苦労してこの複雑なプロットを仕上げたとのこと、その上、映画独自の設定まで加味してあってたようで、最終的にこれだけ盛りだくさんのエピソードなのに実にスムーズに入ってきて、そのこだわりのプロの仕事に驚きです。
平川雄一朗監督はTBSドラマ演出から「そのときは彼によろしく」で劇場作品を初めて手がけ、次がこの作品とのこと。自分はその二本ともスクリーンで観ることが出来たことになりました。最後の最後、モーゼが出会う相手が・・・という描き方については、編集段階で一度カットされて復活した部分のようですが、自分には説明過多になってしまった気がしてちょっと残念でした。そういえば「そのときは彼によろしく」でのラストに対しても同じような結末を改めて念押しする追加ショットがありました。その前に結末を予感させるシーンがあって、見逃さなければそれで十分伝わる上に更にそれが直接的に描かれることでより安心だというのも分かるんですが・・・・。
配役は今回、本当に見事でそれぞれに魅力的でよかったです。
主演の岡田准一くんも宮崎あおいさんもよかったし、西田敏行氏や三浦友和氏のさすがの味わいも印象深かったし、見事でした。
主要キャラクターはかなり個性的でそれぞれカラフルだけどちょっと残念な人生を過ごしてて、物語の結び方として必ずしも全てがハッピーエンドではないんですが、それぞれにとって救済のようなものがちょっとずつ用意されていたところに辿りつけるのは、結局プラスマイナスをなんとなく考えると得るものがあって、よかったんじゃないかと思えます。特別ではない人としての日常を過ごしていくことは、大体においてそういうもんじゃないかと。もしかしたら自分は気づけないだけで誰かの人生に何かを知らず知らずもたらしているのかもしれないという視点は、「ワンダフルライフ」をちょっと思い出したりもしました。
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