風の歌を聴け / 村上春樹 [本のこと。]
村上春樹氏の小説をデビュー作から、順に文庫で読んでみようと思い立ち、早速始めました。
その後の作品に比べページ数でかなり少ないのは、応募の制限もあって、当初から決められていたことでもあるという理由もあるでしょうし、その長さを選んだということもあるでしょう。
次々と発表された作品をその都度、読んできたんですが、この作品を味わうのは考えてみれば久々になりました。初めて全集で読んでいた当時、自分は20代半ばでした。
だいぶ年月が経って、文章の中で登場する様々な事柄にも(例えばアーティスト名やLPのタイトルなど)、今だから気づけることもイメージできる具体的なことも随分と最初に読んだころとは違って見えてきました。
まだこの頃、春樹氏は作家専業ではなく働きながら書かれているものだったのもあり、チャプターはそれぞれ短く、そこで描かれるエピソードの断片も簡潔なので、ついするするとあっという間に読み終えてしまいそうになったのを、途中からあえて読むペースを落としてじっくり向き合ってみました。そこで、これはもちろん後付けでしかないんですが、断片の中に「ねじまき鳥クロニクル」の情景が浮かんだり、あ、これは「海辺のカフカ」だとか、「1Q84」のあのシーンに重なって情景が浮かぶなとか、繰り返されるイメージがたくさんあって、本当に楽しめました。
そしてこれは自分が現在居る場所がかつてとは変わっているからこそ感じるんでしょうけど、僕も鼠も、ほんとに若々しいなと改めて感じます。
さて、次は「1973年のピンボール」です。
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