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「沈まぬ太陽」 [cinema]


沈まぬ太陽 スペシャル・エディション(3枚組) [DVD]

沈まぬ太陽 スペシャル・エディション(3枚組) [DVD]

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • メディア: DVD


この記事から、やっと2010年のものです。
1/1(金)に観てきました。
本当はこの作品、年が明ける前に時間がとれたら観ておきたかったんですが、結局年明けになってしまいました。
でも、年頭に鑑賞するにふさわしい様々な思いのぎゅっと詰まった見応えがある内容で、たまたまの順番ではあるんですが、このタイミングで観ておけてよかったです。
山崎豊子さんの原作小説は、他のドラマ化されたりしている作品も含め全然読んでいなくて、どういう物語なのかを殆ど知らずに観たんですが、圧倒的な世界観と現在の日本の状況につい重ね合わせてしまう設定など、大きく心を揺さぶられる内容で、観終えて深い感動がありました。
そもそも長い原作ですので、その全貌を映画化するのは無理な話です。
無理を承知でそれを1本の作品にすると詰め込めるだけ凝縮してもこれだけの尺の映画になってしまうんで、実は途中でうんざりしちゃうんじゃないかと不安もありました。
途中、休憩に入る箇所も、え、ここで?・・・っていうシーンだったし。
でも、観終えて大満足です。
そもそも自分は観た映画の評価が甘いところはあるんですが、予備知識はないままであるのに複雑でわかりにくいという印象は無く、濃厚なドラマを存分に堪能させてもらったという充実感がありました。
まず、主演の渡辺謙さん、やはりここで堂々たる存在感で主人公・恩地元を生きていて、信念を貫いてもとことん理不尽な境遇になっていくんですが、特にラストで新たな勤務地へ向かう展開には心が揺さぶられました。この辺りの心情は実は原作には無い表現のようです。途中、息子と二人で牛丼を食べるシーンも印象的で大好きです。
その恩地元と対照的な生き方になっていく行天は、物語上の役柄としては悪役といえるキャラクターなんですが、それを演じる三浦友和さんが素晴らしかったです。そういう三浦さんのキャスティングも、後半に登場する石坂浩二さんも絶妙な配役です。
それと、登場シーンはわずかですが、2009年7月に突然の訃報で驚いた山田辰夫さんが、この作品に出演されていて、なんだか嬉しかったです。これが遺作となったようです。
社会の中で重要なポジションにある巨大企業組織の中でいとも簡単に翻弄されてしまう個人として、恩地の立場はある種サムライのような姿ですが、現実には行天のような選択をしていくことが正解として生きている方がおそらく多いはず。それが人として善ではないと知っていて、実行してしまう。そのために踏みにじってきたものはあちこちにあるわけで、この物語の中で重要な核となるジャンボ機墜落のエピソードはその象徴でした。ここではフィクションとしてことわりがありますが、間違いなく日航機のあの事件を誰もが思い浮かべるし、本当はその事件により遺族となったことよりもその後の対応に最初からあるはずの無い誠意に対して理不尽で暴力的な表情を見せる組織の姿にこそ底の深い恐ろしさを感じたりします。
そう考えると、確かに恩地は理不尽な制裁的人事でおよそまともな人材として扱ってくれない立場に途方に暮れますが、それ以上に深い悲しみがすぐそこにあったと、違った位相から見ればまだそこには限りなくやるべきことがありそうだと思える立場とも言えるのかもしれません。
それを決して恵まれた境遇とは言わないまでも。
なので、もしかしたら全部観終えて最終的にあの牛丼屋でのシーンが味わい深く思えるのかもしれません。

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 文庫



沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) (新潮文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 文庫



沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/12
  • メディア: 文庫



沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/12
  • メディア: 文庫



沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/12
  • メディア: 文庫



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コメント 4

ジャニスカ

こんにちは。はじめまして。
実は私も元旦に本作を見まして、
新年早々、重厚な作品世界に打ちのめされた口です。
感想もcsさんが書かれているものにほぼ同感です。
私もやはり牛丼屋のシーンで恩地が語る話に
本作のテーマが集約されていたような気がしています。
旧態依然とした企業体質は「戦後」という時代の象徴だったということでしょうか。
by ジャニスカ (2010-01-16 14:27) 

cs

ジャニスカさん、はじめまして。
niceとコメントどうもありがとうございます。
元旦にですか。偶然ですね。
ここで描かれている国民航空って、そのまま実在のあの企業そのものだとは言わないまでも、組織の体質としてこの物語のままであっても不思議は無い気はします。「戦後」というのがずっと先延ばしにしてきた本来背負わなければならないものって、もう知らないふりで済まされない状況になっているはずです。
恩地にとってある意味で自分が理想論かもしれないけど信じてきたはずの組織の姿が現実としてあまりに形骸化して違った姿をしていても、信じ続けていていいものがちゃんと残っていたと気づけたのがあの牛丼屋でのやりとりのように思えました。
by cs (2010-01-16 19:46) 

non_0101

こんにちは。
元旦から凄い作品を選択したのですね~
本当に見応えのある作品でした。
私は恩地の人生の物語と思いながら観ていました。
でも、きっと観る度に視点が変わって発見がある作品ですよね。
次に機会があったら、またチャレンジしてみたいです☆
by non_0101 (2010-01-17 21:28) 

cs

nonさん、niceとコメントどうもありがとうございます。
毎年元旦は1000円で安いので、何本か観たい作品をハシゴするんですが、今年はこれ1本で十分でした。
大満足です。
恩地元という人物の骨太な人生がどっしりと響きますね。
nonさんの記事にあったように、「クライマーズ・ハイ」を思い浮かべてしまう事件が描かれていますが、どちらも胸に迫るドラマで圧倒されました。
自分は、まだちょっと気後れしますが、もしできたら原作にも挑戦してみたいと思っています(有言不実行になっちゃうおそれはかなりありますが・・・・・)。
by cs (2010-01-17 21:42) 

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