「好きだ、」 [cinema]
もう公開が始まって何週か過ぎたんだけど、やっとこの作品を観ることができました。
大好きだった「tokyo.sora」以来、新作を待ち望んでいた石川寛監督です。
空を真上に見上げる感じの画。
今回も幾度となく登場してきますが、これは監督が小中の短い時期に過ごした秋田県・大館にて、10代のユウとヨースケが暮らす世界。この蒼白い空間の多い映像が何しろ美しくて惹きこまれているうちに、ぎこちない二人の限られた時間が無為に流れて、切ない出来事が無常にもピリオドを打ってしまい、まるで自分のことのように胸が痛む前半部は終わってしまいました。
10代の頃、とにかくやたらと意識過剰で臆病で、ガキの自分をそのまま見せられているような感覚。こんな微妙な思いを、どうして映像にできるんだろう。その演出力には感心するばかりです。
30代のヨースケだって、結局一緒でまだ何も終わらせることができずにいる状況なんて、共感以上のものがあって・・・でも物語はその先を信じていいという形を見せてくれるんで、個人的にはとてもとても報われました。こういう体験に近いものがあったわけではなく、でもこの気持ちは確かにかつて自分も持っていた覚えがあって。
とても不思議な余韻で映画館をあとにして、自分の日常の中に疑似体験の記憶が混じって残るような感覚が少しあって、気づくと、映画の中の10代と30代のユウに恋していました。ヨースケの気持ちで。自分であって自分でない感覚です。こうやって、記憶は現実ではない出来事も混ざり合っていくんだろうなと改めて実感。
演じた宮崎あおい、永作博美という二人が魅力的で素敵だったというのはもちろんなんだけど、でもこの作品の世界の中で生きるユウに対して抱いた感情で、その恋が自分にとって既に過去の経験になっている感覚・・・って、ちょっとうまく説明できない現実と虚構が入り混じったような部分をこの映画を通して体験したのでした。なんだか、言葉にするほど自分でもヘンかもなと思う説明ですね。
・・・・・・・・・・・・・・・またもう一度、観に行こうと思います。
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