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「ブラッド・ダイアモンド」 [cinema]

ブラッド・ダイヤモンド 特別版(2枚組) [DVD]

ブラッド・ダイヤモンド 特別版(2枚組) [DVD]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD

この日、ハシゴした3本は上映時間を考えて選んだ結果、最後に重たい現実を描写したこの作品を鑑賞するということになりました。
舞台となっているのはアフリカ大陸の西側に位置するシエラレオネ共和国。自分は無知だったんでこの国の存在も紛争の歴史も全然知りませんでした。映画の中で描かれる革命統一戦線・RUFは政府の腐敗を糾弾すべく国家の将来を担うはずだった若く才能にも恵まれた人たちによって構成されている集団でもあるとのこと、これは衝撃を受けずにいられません。国家の情勢もかなり違う日本でも1990年代に社会に衝撃を与えたカルト集団はやはり将来を保障されていたはずの若者たちによって支持され、TVへの露出で見ても(それが決して全体像ではなくても)年端もいかない子供たちの姿が映し出されていたことを勝手に想起して身近に感じてしまいました。同じ国民として暮らしていたもの同士が互いに銃を向け、その顔はまだ幼い少年たちであるということが悲劇でない訳はないはず。そのRUFの資金源が“紛争ダイヤ”であり、この作品で描かれる様々な立場の人間にその存在が大きく立ちはだかり生活を根こそぎ奪い、場合によっては悲劇の連鎖を生み出していく・・・。脚本上、おそらくこれは誇張している表現ではないし、アフリカ大陸の他の国々では現在も形を変えつつも続いている悪夢なわけです、これは。エドワード・ズウィック監督が撮ったこの作品がフィルモグラフィとして「ラスト・サムライ」と並ぶことに個人的には特別な感覚を持ってしまうし、監督のこれから描いていく作品に期待もしてしまいます。
2007年のアカデミー賞ではこの作品と「ディパーテッド」で主演のレオナルド・ディカプリオが評価されていたわけですが、そのひとつであるこの作品の演技を観ることができて納得です。キャリアを重ねる中であえてスター扱いのものを避けるように系統の異なる作品を選んで到達したひとつの表現がこの作品の中に確かに在る気がしました。競演のジャイモン・フンスゥは、以前「イン・アメリカ -小さな三つの願いごと-」で遅まきながら知った俳優さんだけど、この作品でも精悍で強靭な肉体を持ちながらも愚直なまでの純粋さを体現する渾身の演技が迫力ありました。ジェニファー・コネリー演じるアメリカ人ジャーナリストという立場は監督の視点でもあって、そこで見届ける壮絶な世界に冷静さを保っていながらも踏み込んで関与せずにはいられないという状況があったように思えます。自分は結局、彼女の目にするアフリカの現実に感情移入しながら映画を観ていたんだろうと後から気づきました。「ホテル・ルワンダ」を観たときも感じたんですが、こうした作品に触れ、知っていく、思いをめぐらすことからだけでも、そこから何かが始まるきっかけになるかもしれないと考えたいです。
それにしても、過酷な状況下で死体が目の前にごろごいろしているような中、人々の集まる中から流れてくるパーカッシブで躍動感のある音楽の浮き立つような陽気さには本当に救われます。精神性の高さと貧困の底にある生活環境の劣悪さが同居する混沌を、勝手にこちらは 厳しい社会情勢=かわいそうな人たち と分かりやすい図式でとらえてしまいますが、実際にはそこには日常の暮らしの笑いもあるし、強制的な力だけでは奪い去れないものが確実にある訳です。パンドラの箱の中に最後に残ったものが未来を知る災禍で、人々は希望を失わずに済んだというエピソードにも通じる話なのかなと思ったりします。ちょっと飛躍する連想ですが沖縄の音楽があんなにピースフルに響くのも、もしかしたらこのことと共通するのかもしれません。


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コメント 6

映画を非常に真摯に見られておりますな。
ブラッド・ダイアモンド、吾輩も見たくなりました。

ディカプリオは、やはり「ボーイズ・ライフ」と「ギルバート・グレイプ」が
秀逸で、レオ様などと呼ばれていた時期は大嫌いだったのだが、
最近、一皮むけたようで興味がわいてきております。
by (2007-04-21 18:31) 

cs

dandyさん>
はじめまして。
niceとコメント、どうもありがとうございます。
ディカプリオくんは、やっぱり「ギルバート・グレイプ」が素晴らしくて、その後のスター扱いの時期は、頭ごなしに悪くはないんだけど作品より有名人の顔が前面に出てしまっているようで、本人にとっては実際に評価されていないフラストレーションがけっこうあったように思えます。でもそんな中でしっかり生き残ってきただけの意味はやはりある訳ですね。もしよかったら、そんな彼をぜひご確認ください(その人の感じ方があると思うので、ご覧になってまた感想でも残しに来てもらえたら嬉しいです)。
by cs (2007-04-21 23:49) 

minku~♪

映画の内容と、ジャイモン・フンスゥとジェニファー・コネリーに興味があって、観たいと思ってる作品ですが、「レオはどうなんだろう?」とちょっと不安もあったり(レオが演じることによって、storyが死んだりしてないか?)したんですが、観た人の感想を聞くと、くおいるさん同様、評価されてる人が多く、安心して観にいけそうです^^
しかし、今の私の環境では、上映中に行けるかと言う心配はあって。。。
でも、この作品はスクリーンで観たい1本なんですよね^^;

ナイロビの蜂など、近年になって、少しずつ、アフリカが他国に利用されていることを映画を通して知る機会が増えて来て、くおいるさんと同じく、なにができる訳ではないけど、少しずつでも世界の現実を知るきっかけに映画が役立ってくれていることに感謝します。
by minku~♪ (2007-04-22 15:11) 

cs

minku~♪さん>
コメントに来てもらえて嬉しいです。
新たな環境で色々と大変ですね。
よくよく考えてみるとディカプリオ氏の出演作は「ギャング・オブ・ニューヨーク」以来というくらいでした。それほど自分は敬遠していたという意識はなかったけど、結果そうなんですね。スクリーンで映える作品ですので、minkuさんも映画館で観ることができるよう祈ってます(いろいろ条件が整っていかないと厳しそうですね・・・・・)。

誇張とか先入観だけではなく先進国は間違いなくアフリカにたぶん必要なかった近代経済の功罪を持ち込んでしまっているんですよね。その事実を隠さずにできるだけありのまま描いていくような、我が身を振り返るような映像を撮影する気持ちって、なかなかすごいことだと思います。“ハリウッド”でそんな作品の企画が通るって。
最近、日本映画は活況に思える興行状態ではありますが、例えば韓国で「トンマッコル」のような映画がヒットしたような文化に早く日本もなっていければいいなと切に願います(自分も好きだから観るし懐古が悪いとは言わないけど、もっと評価される対象が違うほうに向いてもいいですよね)。
by cs (2007-04-22 17:05) 

Sho

この映画は、ものすごい評判ですね。「ホテルルワンダ」もこの映画も、ぜひ観ようと思っています。
CSさんが最後に書いておられた

>勝手にこちらは 厳しい社会情勢=かわいそうな人たち と分かりやすい図式でとらえてしまいますが、実際にはそこには日常の暮らしの笑いもあるし、強制的な力だけでは奪い去れないものが確実にある訳です

これは、あるゆることに当てはまると思います。映画は未見ですが、そう思います。
by Sho (2007-05-01 20:49) 

cs

Shoさん>
niceとコメント、どうもありがとうございます。
アカデミー賞では同じディカプリオくんの「ディパーテッド」が評価されてるみたいですが、こちらの観た時のずっしりくる手応えはやはり感想に顕れるんですね、きっと。
「ホテル・ルワンダ」も見ごたえがあったんですが、Shoさんの読み応えのある感想が楽しみです。もしご覧になる機会があればどう表現されるか、期待してますので。

そうですね。最後のその辺の言葉って、自分が普段暮らす中でも何気なく思ってる部分でもあるから、この作品に限った発想ではないですよね。
「ホテル・ルワンダ」でも音楽の豊かさは最後になんかずっと引きずるように残りました。それは救いでもありました。
by cs (2007-05-02 01:35) 

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