羊をめぐる冒険 / 村上春樹 [本のこと。]
「ピンボール」に引き続き今回、この作品を久々に読み直しました。
といっても、実はもう1か月以上前に読了しています。
しばらくぶりの更新になってしまいました。
内田樹さんの「もういちど村上春樹にご用心」を読んでみて、特に読み直したかった長編がこの作品でした。
春樹氏が新しく翻訳しなおした「ロング・グッドバイ」がそのきっかけでもあり、内田樹さんの指摘の通り、この小説の描く世界、特に登場人物の符合はやっぱりとても興味深かったです。少なくとも、初めにこの小説を読んでいた頃、自分はレイモンド・チャンドラーは知りませんでした。
初期の2作品では、現実の世界と地続きの舞台で描かれているのに対し、この作品以降、より深くなった“井戸”の中の風景が登場することになります。その舞台装置が今回は北海道という土地であり、いるかホテルというメインステージであり、羊男の棲む世界でした。
特別な耳を持つ彼女、羊博士、その息子であるホテル支配人、先生の遺志を継ぐ男、そして過去の作品とをつなぐ大事な役割になる鼠と、この物語で主人公・僕に関わってくる人物たちが、その後の長編小説でも形を変えて登場するようなその原型ともいえるものに思えました(幾つかの作品を読み進めていくと、別々の役柄を、同じ顔ぶれの俳優が作品に応じて新たな仮面をかぶり演じ分けていくようで、その面影をどこかで知っているようなちょっと独特の印象があるような気がします)。
これで、初期三部作は一度、ピリオドを打ち、次のフェーズに入ります。
今度は順序としては本来、短編に行くのもありなんですが、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」に向かっていきます。
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