「白ゆき姫殺人事件」 [cinema]
4/4(金)に観てきました。
随分TVで予告CMを見かけていて、そういう作品はどうもちょっと天邪鬼な気分が働いて、また実際観てみると予告で勝手に描いていたイメージほどではなくて期待しにくかったりもするんですが、これは行ってみようと。
湊かなえさんの原作は、この公開時期に合わせて書店で文庫が平積みになっているのを見かけていましたが、まだ読んでいません。映画化されたりTVドラマ化されたりする作品がかなり数多い印象ですが、「告白」以外は読んでいません。
とある殺人事件を発端に展開していく物語が、事件を追うのは警察とかではなく、好奇心というか野次馬根性の匿名のネットの住人というのがユニークで、設定上彼の置かれた立場がワイドショーに関わるという部分から、観ているこちら側は勝手にミスリードして犯人像を断定していき、容疑者っぽく見える一人の人物を執拗に追いかけていく“TVのこちら側”の一員として参加していくように思えてきます。結局、その展開そのものが作者の思惑通りの部分でもあるんですが、そのゴシップ気分がエンターテイメントとして描かれているのが過去あまりなかったように思えます。スキャンダルを求めるあまり加熱するマスコミの姿勢に暴力的な側面を感じる「誰も守ってくれない」は最初から批評的なスタンスでネット社会であったりマスメディアであったりが登場していますが、この作品もある面では似ているんですが、こちらは肯定はしていないものの批評的にメディアの恐ろしさ云々というより、その現実がすでに在るものとしてミステリーを描くという部分に重きが置かれているように思えました。
事件の後、行方知れずとなることで犯人なんじゃないかと思われていく主人公・城野を演じた井上真央さん。
様々な証言者たちの前に登場するので、発する言葉は断片だし、動作や表情で同じ状況でも微妙に違って見えるシーンを繰り返し演じていて、このキャラクターの実像をなかなかつかみにくい感じが本当に見事でした。後半になって“私は私がわからない”という独白があって、そこから様々な事象が反転していく展開はミステリー小説としては種明かしになる部分なんですが、この辺りが本当に惹きこまれました。
城野さんの実像が次第に明瞭な輪郭を伴ってくるに従って、心に温かいものが満ちてくる感覚があって、で、ラスト近くのアンとダイアナのやりとり。
こういうの、大好きです。
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