神様のカルテ / 夏川草介 [本のこと。]
10/20に読了しました。
最初に出た単行本を書店で何度も手に取っていましたが、先に映画を観て、文庫化されたものを購入して、待ち遠しかったこの原作をじっくり味わいながら、時間をかけて読んでいきました。
映画以上に栗原一止医師はとことんくたびれて、擦り減って、やっとの思いで両足で踏ん張っている感じがしました。地域医療の過酷な現実は、それほどに厳しいんだろうと改めて感じます。でも、一止には愛する細君と、敬愛する夏目漱石がすぐ傍に居てくれています。こうした心の拠り所があることに救われる、身近で何気ないものこそが何よりの価値であることは、それに気づけるということは、とても大きな意味がある気がします。彼が病院内で安心して変人扱いされていられる環境、その豊かさって、少なくともこの作品の描き方では大学病院の医局内では不必要なものとしてなくしてしまうように思えます。
御嶽荘が世間の世知辛さから距離を置いている特別な場所であるように、合理化や効率化により切り捨てられてしまった途端に不必要なものとして軽々と失ってしまうのは、人が本来人であることの何かのようにも思えたりします。
実に爽やかな読後感とともに、真剣に自分自身のこととして考えなければいけない大事な何かを受け取ったような気がします。
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