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極北クレイマー / 海堂尊 [本のこと。]


極北クレイマー 上 (朝日文庫)

極北クレイマー 上 (朝日文庫)

  • 作者: 海堂 尊
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2011/03/04
  • メディア: 文庫



極北クレイマー 下 (朝日文庫)

極北クレイマー 下 (朝日文庫)

  • 作者: 海堂 尊
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2011/03/04
  • メディア: 文庫


連休に入ったこのタイミングで読了しました。
海堂尊作品は文庫化されたら買って読むというルールは別にないんですが、なんとなく自分の中でそういう習慣になっており、読んでいない単行本が幾つもあるのは知りながら、文庫化作品はだいたい読み終えたのでちょっと小休止、改めて「チーム・バチスタの栄光」から読み直しておりました。そんな折、まだ手元になかった「ひかりの剣」を購入した後に、この作品が平積みにされているのを書店で発見して、早速追加購入、こちらを先に読み始めました。
新しい物語の舞台は極北市民病院。
既に読んでいた「ジーン・ワルツ」とつながってくるエピソードですが、これまでにはない新たなロケーションで物語が展開していきます。となると、当然登場人物もまた一から始まる状態で、主人公の今中先生はもちろん、病院内には新顔勢揃いです。唯一、産科の三枝先生は「ジーン・ワルツ」とのつながりで知っていたわけで・・・ということは、この作品の着地点が悲劇であることを知りながら読んでいくことになるという、これまでに味わったことのない向き合い方になりました。
地方自治体として、すでに破綻が見え隠れする中で病院の実情を描いていくほどに今中にとっては明るい話題は何一つ見つけられない八方ふさがりの状況に現れた救世主は、まさかの外科医(それもなんちゃって医師:そして「螺鈿迷宮」からのつながりとなるエピソード)って。このキャラクターの投入は面白すぎて最高でしたが、意外にもあっさり去ってしまい、いよいよ絶望的な結末に。
でもそんな孤軍奮闘・満身創痍の今中先生にもう一度踏み出させるだけのエネルギーを与えてくれるのは、「ブラックペアン1988」の彼と、極北救命センター長。
このお馴染みの顔ぶれに見守られながら幕を閉じる物語の、読み終えたときの気分は、途中で感じていた暗くて辛いだけの結末とは違っていました。
海堂先生、さすがです。

ラスト間近に語られる言葉がしびれたので、原文をそのまま勝手に引用して紹介しておきます。

「メディアはいつもそうだ。白か黒かの二者択一。そんなあなたたちが世の中をクレイマーだらけにしているのに、まだ気がつかないのか。日本人は今や一億二千万、総クレイマーだ。自分以外の人間を責め立てて生きている。だからここは地獄だ。みんな医療に寄りかかるが、医療のために何かしようなどと考える市民はいない。医療に助けてもらうことだけが当然だと信じて疑わない。何と傲慢で貧しい社会であることか」

ここでの“医療”という言葉は、ほかの公共的なものを含めたサービス全般について置き換えて言えることだと思います。
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