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螺鈿迷宮 / 海堂尊 [本のこと。]


螺鈿迷宮 上 (角川文庫)

螺鈿迷宮 上 (角川文庫)

  • 作者: 海堂 尊
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2008/11/22
  • メディア: 文庫



螺鈿迷宮 下 (角川文庫)

螺鈿迷宮 下 (角川文庫)

  • 作者: 海堂 尊
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2008/11/22
  • メディア: 文庫


海堂さんの小説が気になるマイブームに拍車がかかっています。
どんどん読み進めてしまいます。
この作品、実際には「チーム・バチスタの栄光」が世に出る以前にすでに原型があったようですが(チーム・バチスタが賞を受賞して発刊になる以前の時点で、ある種見切りを付けてテイストの違う別作品として取り掛かっていたとのこと)、これまでの東城大学付属病院から初めて舞台が異なる場所へと離れた作品、そして物語の時制としては「ジェネラル・ルージュの凱旋」の1年あとの出来事とのこと。
碧翠院桜宮病院という新たな舞台は、ある種東城大学病院とコインの裏表の関係、その深い闇の部分の描写から東城大学病院の陰も投影されていたりして、最先端医療を標榜する東城大学病院では描ききれない部分でもあり、土着的で濃密な死の匂いが放つ独特の薄ら寒さがあります。江戸川乱歩賞への応募を考えて書かれていることからも、やっぱりちょっと和の湿気も感じるダーク・トーンがこれまでと随分違って見えます。これはこれで自分は嫌いじゃないのを読んでて改めて発見しました。おどろおどろしいまではいかないさじ加減のせいもあるかも知れませんが。
この舞台での終末期医療のひとつの提示の形はある種の理想でもあり、現実には成立しにくいからこそ大きな意味もあるものだと思うし、救命救急や小児科同様、経済効率原理主導で追いやられてすぐ先には出口もない衰退が見えてしまう状況は日本の医療の現実そのものに思えたりもします。この作品の中でもその理想の追求は敗北に向うし、ジェネラル・ルージュでも救命救急の現場は高潔な魂の疲弊の先にやはり破綻に一直線に向っている現状を描いていました。

自分は作品の発表順序としては逆転してしまう形で、これより先に「ジェネラル・ルージュの凱旋」を読んでしまったんですが、この作品でも再度登場する厚労省の二人の人物、白鳥と姫宮が舞台を変えて活躍?する展開が楽しかったです(再度っていうのは本当は逆なんですが、自分にとってはこっちでも姫宮登場なんだ・・・と)。ここでの主人公・天馬大吉くんは、今のところ他の作品では見かけていませんが、彼のどんどんトラブルに巻き込まれていく悲惨な姿は妙にコミカルで面白かったです。
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