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「第9地区」 [cinema]


第9地区 Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)

第9地区 Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: Blu-ray


4/24(土)に「オーケストラ!」とハシゴしてきました。
南アフリカ共和国出身、ニール・ブロムカンプ監督は長編映画はこれが公開初となった作品ですが、パンフによると製作のピーター・ジャクソンとゲームの映画化「Halo」でデビューの予定があったのに企画が頓挫し、紆余曲折を経てこの作品が完成したとのこと。そしてこの脚本のアイデアはブロムカンプ監督が過去に手がけた短編を発展させたもので、その独創的な映像も監督自身のスタイルとして既にある程度の形があったことが分かりました。それにしてもユニークな作品です。巨大な宇宙船が飛来して異星人と遭遇するという設定が架空の状況なのは観ている観客が大前提として受け入れて始まるんですが、そこで描かれている共存者への差別意識、偏見の感覚は妙にリアルで、エイリアンを極端に醜悪なデザインにしているだけで、観ているうちに自然とそれが民族や文化の違いに対する不寛容な態度とそのままイメージが結びついて思い浮かんできました。舞台設定が1982年の南アフリカから始まり、既に30年近く経った現在というだけで、かなりデリケートな問題になっている事実がすんなり入ってきます。そのまま実際の南アフリカの現状や過去に結びつきますが、圧倒的な武力で制圧するやり方自体はこの国だけの事実ではない、もっと日常的に思い当たる部分があちこちに見えてきます。そうした優位に立つ側の表情があくまで公式な印象はクリーンにと、メディア映りを気にする滑稽さの描写が痛烈な皮肉になっていました。
それが後半、語り部の主人公、MNU社の現場責任者ヴィカスの身に起こるアクシデントにより状況が一変して、それまでほぼ沈黙していたエイリアンたちの隠されていた姿が少しずつ見えてきます。これにより、そこまでは単なる群集扱いだったエイリアン側の個性、キャラクターも急にはっきり表れてきて、ある意味では人間臭さに共感もできたりして、気づけばヴィカスとクリストファーには絆のようなものまで芽生えてたりして、ここから一気にエンターテイメントのアクション作品に様変わりです。この展開には驚きました。
観終えて、色々と考えさせられる作品でした。

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non_0101

こんばんは。
> 共存者への差別意識、偏見の感覚は妙にリアルで、エイリアンを極端に醜悪なデザインにしているだけで、観ているうちに自然とそれが民族や文化の違いに対する不寛容な態度とそのままイメージが結びついて思い浮かんできました。
もう、このイメージが強すぎで、観ているのが嫌になるほどでした(^_^;)
これも監督さんの策略かなあと後からなら考えられますけど、
観た直後はざらりとした嫌な感じが胸の中に残っているような気になりました☆
by non_0101 (2010-05-06 00:24) 

てくてく

こんばんは^^
強烈な作品でしたね。
すごく勢いがあって
あっという間に時間が経った、と言う感じでした。
こういう作品に出会えると嬉しいですね^^
映画が好きで良かった、なんて思います♪
by てくてく (2010-05-06 22:18) 

cs

nonさん、niceとコメントどうもありがとうございます。
そうですよね、これって、観ていて決して気分のいいものじゃないなと思えることこそ、監督の狙いとしているところに思えました。
あのエイリアンの外見はヒトをその内面の醜さで現したらああなるんじゃないかというデザインで、劇中で蔑称として使っているほどエビって訳でもなく昆虫でもなく、実際にはやはり甲殻類とか節足動物とかを擬人化した姿に思えてきました。半分ドキュメントっぽい語り口とか、その生々しさが後からも感触としてなんだか残る作品ですね。
by cs (2010-05-07 00:16) 

cs

てくてくさん、niceとコメントどうもありがとうございます。
確かに、なんか濃いものを一気に観たという感じでした。
この作品を観ていると監督は、とにかくこういう作品を目指そうという表現したいものがすごく明確で切実で身近なものを自分らしいスタイルで撮ったというものになっている気がしました。
そういう意味で凄く刺激的で、鑑賞することイコール映像世界を体験することに直結してる、結構独自のポジションにある作品ですね。
ずっと時間が経ってから、あれをリアルタイムで味わってたんだ、と思えるような作品なのかもしれません。
by cs (2010-05-07 00:24) 

Yakoha

こんにちは。私も先週観ました。
てっきり「エイリアン・ネイション」だと思ってたら年齢制限付の映像にぶっ飛びました。ラストショットに悲壮感というか哀愁を感じました。(笑;)

by Yakoha (2010-05-10 22:43) 

cs

Yakohaさん、はじめまして(ですよね?)。
niceとコメントどうもありがとうございます。
やはりこの作品、改めて思い返してみても相当個性的ですね。
ヴィカスが変容して使い始めた武器のとんでもない威力が凄かったんですが、あのエイリアンたちは最後まで直接ヒトに対して暴力という手段は選択していなかったんですよね。これ、脚本上意図的にそういう描写にしたのだとしたら、なんだか観終えてから時間が経って、また少しこの作品の別の面白さが発見できたように思えます。
by cs (2010-05-11 00:46) 

ジジョ

「オーケストラ!」とハシゴですか〜。
濃い〜かんじの一日ですね^^
全然タイプの違う2本ですけど、
どちらも面白い作品でしたね〜☆
by ジジョ (2010-05-12 04:23) 

cs

ジジョさん、niceとコメントどうもありがとうございます。
確かに、全然かけ離れてるタイプの作品のハシゴでした。
こういう場合、どちらか1本でも十分なほど満足度はとても高かったです。
自分は特に偏ったチョイスになりがちなので、2本とも出演者も監督も(不勉強もあり)よくわからないというパターンはかなり珍しく、本当に新鮮でした。
どちらも改めてまたじっくり見直してみたい作品でしたね。
by cs (2010-05-16 16:11) 

たんたんたぬき

cs さんこんにちは。
過去のSF作品の常識を覆す(笑)設定が抜群でしたね。
お気楽に楽しむのも、深読みするのもどちらも有りではないでしょうか。
「エビ」たちの醜悪な見てくれにもかかわらずどこか親近感が持てたのは、目の作り方にあったのではと思い返しています。
by たんたんたぬき (2010-05-17 22:31) 

cs

たんたんたぬきさん、niceとコメントどうもありがとうございます。
確かに設定の奇抜さ、そこから透けて見えてくる風刺のある種根深さはかなり個性的でしたね。それでいて、コアな通好みの作品ではなくきちんとエンターテイメントとして成立してるスタンスが観客層を限定しない間口の広さになってるし、製作陣も自分たちが撮りたいものとして作ったというのがよくわかります。それがインディペンデントな企画として成功してる要因でもありますね。
「エビ」のあの眼のデザイン、直立する姿勢は、もう甲殻類のものではなくて明らかに擬人化してるものですね。というか、ほんとはヒトって、他の生きものからはこう見えてるかもよって姿なのかもしれませんね。
by cs (2010-05-23 10:31) 

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