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「おとうと」 [cinema]


おとうと <豪華版2枚組> [DVD]

おとうと <豪華版2枚組> [DVD]

  • 出版社/メーカー: SHOCHIKU Co.,Ltd.(SH)(D)
  • メディア: DVD


2/14(日)にハシゴしてきました。
山田洋次監督の作品は実はこれまであまりちゃんと観ていなくて、映画館では「隠し剣 鬼の爪」を観て、その前作「たそがれ清兵衛」を見逃してて後からビデオで観ていた程度でした。寅さんもTV放映をちらっと観ているくらいです。
吉永小百合さんと笑福亭鶴瓶さん共演は「母べえ」以来のコンビですが、今回は姉と弟の関係とのことで、そのお二人を軸とした脚本製作はまず何より話し言葉の部分で苦労があったようです。吉永さんが鶴瓶さんのような大阪弁でも、逆でもどうも違和感はあるし、となるとその二人の姉弟関係って、まず成立させにくいという妙なハードルがありました。実際には、吉永さんが二人で会話しているときにふと、イントネーションで影響される程度の言葉で解決してて、そこにあまり無理はない形になっていました。吉永さんの凛とした背筋の伸びている佇まいと鶴瓶さんのどうしようもなく流されていってしまう自堕落に生きてきて社会に対して修復しようもなくなってしまった雰囲気(この人物像と周囲の人々の気遣いの行動がそのまま寅さんの世界観に直結します)、そして冷たい時代の波に確実に押されながらも人づきあいのあたたかさが残る街の暮らし、この対比はやっぱり自然と“寅さん”の世界を思い出してしまいますが、当然この企画を進めていく時点で山田監督も承知の上で描く世界です。そこに息づく、普段まず言葉にはしないけど、深いところでしっかり認め合えている家族の確かな絆の見える、ほっとできる作品でした。
鶴瓶さんは2009年の「ディア・ドクター」も印象的でしたが、スクリーンで観てて伝わる迫力がここ数年、TV露出の多い芸人さんとしてのイメージとはちょっと別物になってきて、いい感じです。
加瀬亮くんは山田洋次監督の作品が初参加とのことですが、キャラクターは彼の素朴な感じがぴったりで、なんだかはまっていました。ネットで読むことが出来たインタビューでの発言などであったんですが、山田演出は彼のこれまでのキャリアと結構違うアプローチだったようで、それを存分に楽しんでいるようでした。
そして一緒に初参加である蒼井優ちゃん。
個人的にはもう最初からこの作品を鑑賞するお目当てが彼女だったんですが、吉永さんと親子という設定が本当にぴったりで、母と娘として薬局に白衣姿で並んでいるなんて、ご近所の森本レオさんや笹野高史さんじゃなくてもついつい店頭に用もないのに無理やり用事も作って顔出しに行っちゃいますね。これまでの作品で彼女じゃなきゃ成立しないというポジションで観る度に新鮮な印象があったんですが、加瀬亮くん同様、山田演出ではまた違うアプローチで参加している感じです。ある種徹底的に、ごく普通に街で暮らしている年頃の娘という、性格付けの上での際立った特徴をあえて示さない役柄っていうのは、挑戦しがいもあったんじゃないでしょうか。それにしても、ウエディングドレス姿っていうのはこれまでなかったんで、それだけでも観てよかったと思いました(何しろ、2009年はTVCM以外では映画でたっぷり観られる機会がほとんどなかったんで)。「ホノカアボーイ」もちょこっと友情出演程度の登場だったし、「いけちゃんとぼく」では声だけだったし、久々に彼女の姿をここまで全編観ていられるなんて、なんだか、ありがたかったです。
山田洋次監督らしい市井の人びとのふれあいの何気ない姿の先に、この作品ではシビアな現代の世相も見えてくる設定で、その重要なモチーフとして後半に“みどりのいえ”が登場してきます。ここで働く職員を演じる小日向文世さん、そして最近だと「サヨナライツカ」の出演も記憶に新しい石田ゆり子さんともにやはり山田監督作品は初参加だったようですが、深刻になりすぎることなく、時にユーモアもあり懐が深くて柔らかい雰囲気のキャラクターが実に魅力的で、物語としては切ない展開にもなるんですが、ほどよい体温の感じられる淡くて素敵な味わいがありました。このお二人の演じたキャラクターも含め“みどりのいえ”自体のモデルとなった民間ホスピス施設「きぼうのいえ」も都内に実在するんですが、厳しい社会情勢の中でひっそりとこういう場所があり、もちろん大変さは日常的にあり続けるであろう中でそこに身の丈の善意を提供している人々が実際に居るんだということが、余韻として心地よく残りました。
観ることが出来てよかったです。

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よろずや「M」

こんにちわ。
時々拝見してDVD鑑賞の参考にしています。
おとうと、DVDが楽しみです。
つるべさん、役者さんとして結構すきです。
TVドラマで拝見していてもうまいなぁ・・と。
by よろずや「M」 (2010-03-02 11:15) 

cs

よろずや「M」 さん、niceとコメントどうもありがとうございます。
これまでも記事を読んでもらえていたんですか。
ありがとうございます。
こちらもお邪魔した際には、一言残しておきますので今後ともよろしくお願いします。
こういう作品だと、DVD鑑賞でも味わいがあんまり損なわれないんで、いいと思います。基本的には人情モノっていうか、山田洋次監督って、やっぱりこういう世界観ですよねっていうのがすごく分かりやすいんですけど、その中に世相を反映してる看取りの場面であったりとか、しみじみする場面に蒼井優ちゃんっていうのが新たしいなとか、いろいろあるんですね。
鶴瓶さん、TVドラマでも味のある役を演じてて、なかなかいいですよね。

by cs (2010-03-02 21:45) 

よろずや「M」

あけましておめでとうございます。
やっとこれ、鑑賞できました。
うわ~!っとなる感動ではなかったですが・・
ぐっとくる静かな感動といいますか・・
余韻みたいなものが残っております。
この正月はDV三昧です。
本年も宜しくお願いいたします。
by よろずや「M」 (2011-01-01 20:54) 

よろずや「M」

↑↑
「DV三昧」ってなってる~!(笑)
もちろん「DVD三昧」です。
失礼しました。
by よろずや「M」 (2011-01-01 20:56) 

cs

よろずや「M」 さん、あけましておめでとうございます。
2011年、最初のniceとコメントどうもありがとうございます。

そうなんですよね、これ。
じんわりくる感動というか。
切ない結末だけど、納得でした。
DVD三昧、いいですねぇ。
自分はとりあえず、「チーム・バチスタの栄光」のDVD特典映像を観ていました。黒崎教授/平泉成さんが紹介するチーム・バチスタ撮影の現場っていうのが楽しかったです。最近、TV観てると平泉さんの真似する人、なんだか増えてる気がするんですよね。

今年もよろしくお願いします。

by cs (2011-01-02 11:37) 

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