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「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」 [cinema]


ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~ [DVD]

ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~ [DVD]

  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • メディア: DVD


10/10(土)に観てきた作品、「私の中のあなた」とこれです。
根岸吉太郎監督は「」をだいぶ前に観て、「サイドカーに犬」を観て、今回になりました。
脚本の田中陽造さんは、この企画で最初から佐知のキャラクターを松たか子さんのイメージとして執筆されていたようで、太宰治の原作短編にある登場人物なのはそうなんですが、小説とはまた別に、演じ手としてやはり彼女がそこに居る存在感が本当にぴったりでした。
田中陽造さんは過去に「セーラー服と機関銃」や「居酒屋ゆうれい」などの作品も手がけいたようです。この脚本そのものは数年間、監督もまだ決まっていない段階から松さんは読んでて、そういう企画がそのまま埋もれることなく、撮影も出来、それが例えば海外の映画祭で評価されて日本でも公開に至って、更に後押しする形で太宰治生誕100年というタイミングもあってよかったなと思います。
そして美術監督は種田陽平氏で、こういうしっかり時代背景を感じさせるセット美術での作りこみ方はさすがです。その上、今回は成瀬巳喜男監督の「浮雲」と共通する資料も基盤にあって、そこにティム・バートン監督が描くような遠近法を映画セット用にあえていじった発想の家屋デザインまで要素として加えられていたりして、じっくり丁寧に製作されているのが良く分かります。同じことは衣装の黒澤和子さんの部分にも言えます。
その松さんの夫となる大谷役の浅野忠信氏。その佇まいは背景にある太宰治のイメージそのものにぴったりはまっていました。独特の文体になっている夫婦の会話のトーンもこの二人の表現で自然に成立してて、その空気がすんなりと無理なく文学的な風格の感じられる作品になっている気もしました。
脇を固める堤真一さんや伊武雅刀さん、新井浩文くんや光石研さんなど、それぞれに味わいのある配役で見応えもありました。ある種無邪気で、その人の良さが仇となる妻夫木くんやいつもより世を拗ねた感じが色気があって現在の年齢でこそ表現できる広末さんも、この配役はぴったりです。
なんだか、この配役のアンサンブル全体の雰囲気は配役も作品のテイストもかなり違いますが「闇の子供たち」みたいでした。

ヴィヨンの妻 (ぶんか社文庫)

ヴィヨンの妻 (ぶんか社文庫)

  • 作者: 太宰 治
  • 出版社/メーカー: ぶんか社
  • 発売日: 2009/10/15
  • メディア: 文庫



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コメント 6

minku〜♪

脇のキャストまで知らなかったのですが、安心して観れそうですね^^

来週は予定はあるので、再来週とか行けたら観たいです。
by minku〜♪ (2009-10-18 23:56) 

cs

minku〜♪ さん、コメントどうもありがとうございます。
この作品が今年でいちばんお気に入りっていうタイプではないんですが、丁寧に丁寧に作ってあるきっちりしたもので、地味かもしれないけど残っていく、古びない作品なんじゃないかと思います。
自分はこういう作品は映画館で観て損はないと思っています。
もし観に行けたら感想を聞かせてください。
by cs (2009-10-19 00:40) 

CORO

『サイドカーに犬』でヨーコさんが、この本を読んでましたね。
美術監督が種田陽平だということにも惹かれます。
by CORO (2009-11-03 10:29) 

cs

COROさん、niceとコメントどうもありがとうございます。
ヨーコさんがこの本を、ですか。
そこは気づいて無かったです。
少なくとも撮影当時はまだ、監督は根岸監督と決まっていなかったはずなんで、不思議なリンクですね。
種田さんの美術は、もちろん作品により様々なタイプがありますが、こういうセット撮影中心のものではより細部へのこだわりが徹底されてて圧倒される気がします。
by cs (2009-11-03 18:45) 

non_0101

こんにちは。
終了間際にようやく観て来ました。
本当に観て良かった~と思える作品でした(^^)
物語も全体の雰囲気も役者さんたちの演技もとても良かったです。
ラスト近くの佐知と大谷のやりとりにはドキドキさせられました。
こういう日本映画に出会うと、日本映画が分かる日本人でよかったなあと
ちょっと思ってしまいます(^^ゞ
by non_0101 (2009-12-21 23:36) 

cs

nonさん、niceとコメントどうもありがとうございます。
後半に向かうにしたがって、この夫婦の独特ともいえる価値観は、この二人であるからこそ共有できているんだなと後から不思議に納得できてしまう、深い部分でのつながりが見えたような気がしました。
それにしても、やはり松さんあっての作品ですね。
日本映画って、がんばって映像的に派手に展開なんてしなくていいから、こういう人と人の機微のようなものを丁寧に描いて見せて欲しいですね。
by cs (2009-12-23 13:48) 

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