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「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」 [cinema]


ベンジャミン・バトン 数奇な人生 特別版(2枚組) [DVD]

ベンジャミン・バトン 数奇な人生 特別版(2枚組) [DVD]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD


3/1(日)にハシゴしてきた作品のひとつがこれです。
デヴィッド・フィンチャー監督の作品を、ひとまずスクリーンで見逃さずにこれています。
主演のブラッド・ピットとは「セブン」「ファイト・クラブ」に続き三度目ですが、以前の作品とフィンチャー監督の語り口の雰囲気が前作「ゾディアック」以降で少し変わってきていますので、たとえばティム・バートン監督ジョニー・デップみたいな関係とはまたちょっと違うのかもしれません。でも、監督と俳優、お互いの信頼関係の強さがあってこそ描けるフィルム作りはやっぱりあるんじゃないかと思います。

F・スコット・フィッツジェラルド原作の小説は読んでいません。
そのユニークなキャラクターの設定から、映画ではあくまで原案としてアイデアを受け継いで独自の物語を展開していったようです。
本来、原作ではデイジーは一切登場しないというのは驚きです。
その時点で明らかに別の物語としてこの作品は成り立っています。
ケイト・ブランシェットとブラッド・ピットは「バベル」以来のコンビですが、二人とも幼い時代から一生をともに演じるにしても、映像のアプローチが全く違います。何しろ、ブラッド・ピットは実際には出てくる顔の殆どがCG加工されたもので、後半はまさにマジックのような若返った姿になって、随分前に観た別の作品の顔に出会うと、妙な感覚になります。ケイト・ブランシェットの若い頃の雰囲気もごく自然で魅力的で美しかったです。

パンフ掲載のレビューにも幾つか指摘があったんですが、エリック・ロスの脚本のムードが同じく脚本を手がけた「フォレスト・ガンプ 一期一会」に共通するものがあります。その上で、これは監督の個性かもしれませんがロバート・ゼメキス監督の描くガンプ一代記は明るくユーモラスでカラフルなのに対し、デヴィッド・フィンチャー監督の創造するベンジャミンの一生は陰影が濃くて内省的で、かなりトーンが違っています。
これは単に邦題として付加されているのでこじつけではありますが、ある意味では、フォレスト・ガンプの人生の方が数奇なものだったし、ベンジャミン・バトンの方が一期一会が描かれているんじゃないかと思えるものがありました。そう考えると、ちょっと表層の部分でタイプは違って見えるけど、どちらも天寿を全うしていた二人の人生はやはり祝福に満ちた彩りの多いものだったんじゃないかと思えます。そしてそれは、この二人だけのものじゃなくて、普遍的に言えることかもしれないし、人の生には何かしらこういう側面はあるのかもしれないと思えます。
いずれは、この命は自分だけの固有のものとして、形は人それぞれ違えど、終わりを迎えるのだから、と。
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rigby

ホント、ベンジャミン・バトンの方が『一期一会』が描かれた作品ですね。
派手さは全くないけれど、いい作品だと思います。

by rigby (2009-03-16 00:02) 

non_0101

こんばんは。
主演の二人の演技とCGの変化に見入ってしまいました(^^ゞ
原作ではデイジーは一切登場しないのですか!?
随分、大胆に内容を変えましたね~
でもデイジーの登場で、監督さんの伝えたかった意味が分かりやすくなった気がします☆
by non_0101 (2009-03-16 00:45) 

cs

rigbyさん、niceとコメントどうもありがとうございます。
この作品って、たぶん観るたびにそのときの気分で様々な感じ方が出来るじゃないかなと思えるものでした。
一期一会が、あちこちにあって、ベンジャミンが出会っていく人々のそれぞれの人生が味わいがあってよかったですよね。
by cs (2009-03-16 00:56) 

cs

nonさん、こちらにもniceとコメント、どうもありがとうございました。
主演の二人が、キャラクターの素材になりきってCGで姿は次々変化していくんですけど、ケイト・ブランシェットもブラッド・ピットも、このそれぞれの持ち味があって、身体表現があって初めて成立するキャラクターでよかったですよね。その上で、やっぱり美しいっていう。
自分も、この小説の原作にはデイジーという人物は登場していないなんて、驚いてしまいました。なお、デイジーという名は「グレート・ギャツビー」にあるそうです。
デヴィッド・フィンチャー監督にとってはこの物語の中で実際の父であるバトン氏の他、父性的な立場でベンジャミンに影響を与えていく人物たちにかなり思い入れがあったようですが、でも間違いなくベンジャミンにとってデイジーとの出会いがあって、初めて彼に人生の中での意味のある部分が明確になっている気がしました。なんといっても、彼女の腕の中でのあのラストは素晴らしいシーンだったし。
by cs (2009-03-16 01:03) 

てくてく

なるほど~、サブタイトルの件、そうかもしれませんね。
「フォレスト・ガンプ」は大分前に観たので、
また見返してみたい気がします^^
by てくてく (2009-03-18 18:03) 

cs

てくてくさん、こちらにもniceとコメント、どうもありがとうございました。
たまたま、どちらもエリック・ロス脚本で、過ぎ行く時代背景と主人公の人生が密接に絡み合って進んでいく語り口が、ちょうど比較しやすいドラマになってるんで、そんなことを考えたりしました。
人の一生を俯瞰で眺めて、そこには実に多種多様な恵みが在るんだなと、しみじみ思える、こういう脚本は好きです。

ちらっとしか登場しないハチドリもなんか気になったり。
ちゃんと意味が掴めないようなことの方が余白があって面白いですよね。
by cs (2009-03-19 00:01) 

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