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ウォーレスの人魚 / 岩井俊二 [本のこと。]


ウォーレスの人魚

ウォーレスの人魚

  • 作者: 岩井 俊二
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1997/09
  • メディア: 単行本


今年、なんだか蒸し暑くなってきた頃に手にとって、久々に読み進め、7/13(日)に読了しました。
たぶんこれで三度目か四度目に読み返したことになります。
学生の頃は、司馬遼太郎氏の幕末辺りの小説、社会人になってからは村上春樹氏と、なんとなく熱中する時期はありますが、基本的に自分は、同じ作品を何度も反復して読み返して味わうのが好きです。
これは小説に限らず、映画も音楽も近いかもしれません。
好きな曲なんて、「それだけ聴いてて、よく飽きないね」と言われることもあったりして。

この小説は、映画「ACRI」の原作で、実際にはこの作品が世に出る機会が無くなって、映画は別の脚本で先に公開されました。
なんとなくですが、ナウシカの映画と原作みたいな関係かもしれません。映画では石井竜也監督が「河童」に続き手がけた独特の世界で、やはりACRIも河童同様にクリーチャーとしての人魚をどう描くかに随分と監督のこだわりがあったと思いますが、設定上要求されている舞台があまりにスケールが広くて、河童で監督自身の原風景を再現して見せたようには容易くは扱えず、興行的にも苦しかったような記憶があります。でも志があってうまくいかないっていうのは決してマイナスではないと思います。作品が完成して残っていくだけで十分報われている部分もあるはずなんで・・・・と、ちょっと話題が逸れ過ぎちゃいました。

序章に登場するアルフレッド・ウォーレスの描写は、生物進化という個人的に好きな話題の部分でもあるんで、読んでてわくわくします。
その後、映画でも実際にはかなり未消化で次々登場している人物が近未来をそれぞれの思惑と偶然の導きによって渾然一体となって展開していく人魚の実在の描写はかなり興味深いです。伝承・伝説での人魚のファンタジックな部分はあくまで演出上の彩り程度で、生物学的な考証、特にヒトとの遺伝的な位置づけのリアリティが何しろ面白くて、人魚の生態としての謎が次第に解明されていくクライマックスがすごかったです。この群像劇のテイストは、ちょうど並行して企画されていて結果先に映像化されることになった「スワロウテイル」の舞台・円都の混沌と地続きで見えてきました。
タグ: 岩井俊二
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