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「歩いても歩いても」 [cinema]


歩いても 歩いても [DVD]

歩いても 歩いても [DVD]

  • 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
  • メディア: DVD


6/29(日)の3本ハシゴ、ラストはこれです。
大好きな是枝監督の新作であるこの作品はシネプレックス幕張での上映は予定されていなくて、この日京成Rosaに出かけるお目当てでもありました。前作の「花よりもなほ」が時代劇で、それまでのドキュメンタリー的な撮影手法から離れたものだったんで、この新作はどうなっているんだろうと観る前は興味も半分、不安も半分のところがありました。

夏の日の出来事にゴンチチの音楽がぴったりで、「誰も知らない」のときのように雑踏であったりとか、蝉の声であったりとか、自然のノイズに溶け込んで心地よかったです。
それと、料理の映像の本当に美味しそうなこと。
ちっちゃい子供にはあんまり喜ばれないんだろうけど、観てると食べたくなる料理が次々出てきます。
豪華で特別なグルメなものじゃないけど、手のかけ方、心遣いが十分に贅沢です。
ちょっとしたカットだけど、まな板の上の手元だったり、手折られてきて活けられた花だったり、アクセントになって登場する映像がほっとします。何気ない部分に、是枝監督の映像だなぁと思わされるこだわりがあって、やはりこの描き方が自分は好きです。
今回はロケと家の中の部分はセット撮影もミックスされているんですが、観ていて当たり前に全部自然光なんだと勘違いしてました。見事です。原田芳雄さんが散歩に出かけたり、阿部さん夏川さん家族が西瓜を手に向かってくる階段も是枝印っていう感じのロケーションで好きです(是枝監督は階段好きっていうので有名だそうで、そういえば「誰も知らない」でも何度も階段を行き来する柳楽くんの姿もすぐに映像が思い出されます)。

阿部寛さんの主演作品が最近続けて公開されていますが、この作品の主人公のようなつかみどころのないありふれたキャラクターっていうのは、まず記憶になかったです。どちらかというと過剰な濃い目キャラに当てられてばかりで、それが俳優としてのイメージになりつつあったりもしていたんで、こういう年齢相応で状況や台詞で語らなくてもリアルに気持ちが伝わってくるポジションの役柄は新鮮でもあり、すごく共感できました。
この設定上の経験は自分にはありませんが(再婚して連れ子が居て、現在失業中とか、作品を観て感じる上で全然そんな状況はたまたまのものであって共通項として探す必要ないんですけど)、ある程度の年齢に達して見る父との距離感っていうのは、よくわかります。我が家に戻ってきた子供たちに母親が振舞う家庭の味やいつまでも子供っていう目線での気遣い、そのまま受け止めるにはなんだか居心地が悪い感じは、実感できます。

これを迎える側の両親の世代の人が観たら、その部分で感じるものがきっとあるんだろうなと思える描き方が、この脚本の深さかもしれません。

死がすぐそこにあって、老いも日常の中にふと見えて、でも子供たちは我関せずでけっこうたくましく自分の時間を過ごしてて。
家族にとってはちょっとだけ特別で、でもなんてことのない一日だけど、印象に残っていく気がします。

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コメント 4

minku~♪

私も先月広島に帰省した際に観ることが出来ました^^

タイトルの「歩いても 歩いても」の意外性に鑑賞中ニンマリしてしまいました(笑)

YOUと樹林さんのやりとりがとて自然でいい感じでしたよね。
とうもろこしの天婦羅とか豪華な料理じゃないけど、どれもほんとつまみぐいしたくなる様な料理達は「かもめ食堂」を思い出すほどお腹を減らしてくれました^^;
さすが是枝監督という感じで、安心して心にしっとりと入ってくる映画でした。スクリーンで観れてよかったです。
by minku~♪ (2008-08-09 21:05) 

cs

minku~♪さんもスクリーンでこの作品を観られたんですね。
こういうのに劇場で出会うと、ほんとに贅沢できてるなぁと嬉しくなりますね。
確かにあの母と娘のやりとりの部分はとても自然でいい雰囲気でした。実家で寛いでると、ちょっと耳の痛い話も何気なく出ちゃったり、決してそれが単に苦痛ではないんですよね。ちょっとだけ居心地が悪くて落ち着けないだけで。なんてことない料理の映像が、穏やかな街並みがじんわり和めて、その感じが是枝ワールドなのかなと思えました。
by cs (2008-08-09 22:30) 

CORO

あのそわそわしたり、微妙にギクシャクした感じ
とても自然で身近でした。
本当に見て良かったなと思える作品ですね。
by CORO (2009-04-13 00:29) 

cs

COROさん、こちらにもnice&コメント&TB、どうもありがとうございました。
こういう実家の雰囲気、居心地悪いはずないんだけど、妙に落ち着かなかったり、ギクシャクしてるほうがほんとは家族としては自然なんですよね。
内容がかなり違いますが、提示しようとしている部分が「トウキョウソナタ」となんだか一緒だなぁと、後から感じました。
すごく心を揺さぶられたりっていう作品じゃないんですけど、観ておけてほんとよかったなと思えます。
by cs (2009-04-13 22:30) 

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