海辺のカフカ / 村上春樹 [本のこと。]
もう何度目なのか忘れましたが、この2月から、ふと思い立ちゆっくりゆっくり読み返してきたこの長編作品を、読了しました。
村上春樹氏の長編小説は、社会人になってすぐくらいのタイミングで発刊された全集を手に取ったのがきっかけで、丁度その当時、身体に馴染んでいく感覚があって熱心に読み始めました。自分の言葉の一文が長くなる部分を除くと、初期の春樹氏の作品にある文体からの影響が今でも大きい気がします。自分の気持ちを言葉にするとき、出来る限り平易な表現にしようと心がけたり、結果的に素直な言葉を選んだり出来ていることにつながっているんじゃないかと思っています。
長編作品は、異なった内容でも繰り返し登場する風景があって、パラレルに進行する章の構成がもうすっかりおなじみです。
物語の後半、登場する森の存在は「ノルウェイの森」や「ダンス・ダンス・ダンス」が思い起こされるし、ジョニー・ウォーカーのエピソードやナカタさんから資格を引き継ぐホシノくんのくだりは「ねじまき鳥クロニクル」の非情な世界観にも通じる気がします。
そういえば、別の面での符合として大島さんは「ねじまき鳥クロニクル」のシナモンになんとなく似ている雰囲気があります。
ジョニー・ウィーカーやカーネル・サンダーズっていう部分では随分遊んでるなと思えなくもないですが、これもポジションとしては羊男に通じる気もするし。
それとはまた別に岩井俊二監督の「リリイ・シュシュのすべて」に近い感覚の、初めて出会ったときにはその暴力描写に圧倒されかなり体力を使った感じが、作品を繰り返し味わうことで徐々に薄れてゆき、今回のように穏やかな気持ちで読み進められたのも新たな発見でした。
登場人物のキャラクターがそれぞれ魅力的で、自分にとっては親近感がわくのでこれまでの作品よりちょっと特別なのかもしれません。
また、読み返したいそのときが来たら、改めてじっくり味わい直したいと思います。
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