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「そのときは彼によろしく」 [cinema]

7月1日、映画の日と日曜が重なって幕張シネプレックスも混むことは十分予想できましたが、上映作品を検討して、これを選びました。ハシゴしたうちの1本です。
市川拓司氏の原作小説は丁度「いま、会いにゆきます」が話題になったころ発表されたもので、気になっていたまま読んでいませんでした。自分の基本パターンとして先に映画化された物語に触れてから原作を味わうという手順を、この作品も踏むことになりそうです。
思えば同じ市川氏の「恋愛寫眞 もうひとつの物語」が「ただ君を愛してる」という形で映画化されたのは例外的なパターンで、原案でもある堤幸彦監督の映画を観てアナザーストーリーである小説を読んで、何年も経ってこの小説が映画化されたために半分記憶も曖昧な状態で鑑賞して、それはそれで余り期待から外れることなく十分楽しめました。で、この作品はいつもの映画が先のパターンに戻り(?)映像化された物語を堪能しました。

主演である山田孝之くんは映画の「電車男」以来だった気がしますが、彼の表現の微妙さ(でも的確なもの)はほんと感心します。今回は内に秘めた感情があるけど表面には出したりしないキャラクターで、その気持ちを彼の店の植物たちがごく控えめに伝える形で(でもその店のひっそりとしたムードや水草を手入れする彼の眼差しが十分に雄弁なところもあったりして)、主役なのに状況に対しても他の人物に対してもどこか少し俯瞰気味なポジションです。その繊細な感じが市川拓司氏の小説世界のキャラクターそのままで、「ただ君を愛してる」のときの玉木宏くんとはまた違う魅力的な存在感でした(玉木くんもコンプレックスを抱えて自問自答するキャラクターをユーモラスに演じててすごくよかったんですが)。そしてかなり限られたシーンでしか登場しない塚本高史くんがまた、山田くん以上にさりげない微かなニュアンスを表現してて、その佇まいもまた魅了されました。それぞれ子役がまたいい感じで彼らの姿を投影しているのがすごくよかったんですが、なかでも子供のゆーじ(塚本くんのキャラクター)くんは最高でした。
彼ら三人を優しく見守る小日向さんもひたすら穏やかだし、淡い思いを抱きながらも積極的には動いたりしない国仲さんもまた清楚な雰囲気で、長澤さん演じる花梨役はそうすると必然的にキャラクターが前面に出る訳ですが(性格付けとしては間違いなく登場人物のほかの誰よりアクティブなはず)、設定上けっこうつかみ所がない要素もあって、やはりちょっと霞みがかったスタンスなのを考えると、ほんと人物全体が遠慮がちな作品なのがわかります。幼いころの重要な場面を描いたロケーションもそうですが、植物の深い緑の中に人が暮らしている情景がこの静謐な雰囲気を形作っているひとつの要因なのかもしれないとふと考えたりしました。
オニバスの種が結末でどうなっていくのか、予想はついていましたがやはり、その変化の兆しの象徴として描かれていて嬉しくなりました。もしかしたら、その部分でラストシーンでも十分伝わると自分は思っていたので、その後の描写は予測が出来る展開でしかないからちょっと蛇足じゃないかなぁとどこかで感じながらも・・・けっこう来てました。涙腺弱すぎです。

そのときは彼によろしく

そのときは彼によろしく

  • 作者: 市川 拓司
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2004/03/31
  • メディア: 単行本

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