百鼠/吉田篤弘 [本のこと。]
少し前に記事で「78」のことを残しました。
この連作小説は、買ってから読了するまでにけっこう時間がかかりました。
ところが、「百鼠」というこの小説集、中には3篇の物語が収録されていましたが、あっという間に読み終えてしまい、自分でもちょっと驚きです。
最初に収められている「一角獣」。
まずこのタイトルに惹かれてしまいますが、タイトルから予想もつかない日常のスケッチが展開。その短いプロットで構成され、描かれる男女のコミュニケーションの味わいが村上春樹氏の世界観に共通する乾いた感覚がありました。この読後感は好きです。
表題作「百鼠」は、これぞクラフト・エヴィング商會という内容で、本のかなりの部分をこの小説が占める比較的長めの1篇。ちょっと実体が掴みどころがなくて、いつもの摩訶不思議な味わいで楽しめました。
最後の「到来」は、ささやかでほっとするエピソード。こういう“小確幸”の描かれ方は気持ちが安らぎます。
さて、予定より早く読み終えたもので、次がまた手元にありません。
さかのぼって「つむじ風食堂の夜」を読み返してみようと思います。
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