「8月のクリスマス」(2005) [cinema]
日本でリメイクされ登場した有名な韓国映画作品というのをこれで初めて目にしたように思います。
ホ・ジノ監督はその後公開された「春の日は過ぎゆく」も観たし、ひっそりと胸を打つ感動作であるだけに、今回の翻案は大丈夫なんだろうかと正直、興味半分、不安も半分でした。
まず主演の2人、山崎まさよし氏と関めぐみさん。普段というか、自分にとっては他の映画作品で御馴染みということがなかったので邪魔になるイメージがあまり無く、けっこうぶっきらぼうにナチュラルにそこに居る雰囲気が好感が持てました。
監督・脚本の長崎俊一氏は現在のPFFにあたる「ぴあ」自主製作映画展入選(1978年)がデビューだったのを初めて知り、不勉強なのを改めて実感しました。「ナースコール」「死国」を撮った監督さんだったんですね。
富山県高岡市のロケーションがまたすばらしかったです。リメイク元にも韓国にあるどこか日本とも共通する原風景のような郷愁を含んだ空気感。懐かしさを感じる夏の暑さ(最近のヒートアイランド的な蒸し暑さではない)。ただ雪が静かに降るだけで感じてしまう寂寥感。そこには舞台を置き換えても待った違和感はありませんでした。そしてカメラはある程度の距離感を崩さず、限られた生を見つめる主人公にはおそらくまぶしいヒロインを冷静に捉えて、時にそこには厳しさものぞかせます。でも、物静かなこの会話や映像の中には確かに感じられるひとの体温の暖かさがあって、ほっとします(ほっとし過ぎて、映画館の暖房も効きすぎて若干意識が遠のいてましたが)。
悲しさをひっぱらずにごくあっさりと幕を引くことで生じる余韻を感じ、また改めて韓国版の作品を鑑賞してみたくなりました。
この主題歌がまた、いいです。普段の山崎まさよし氏の唄声もあたたかくていいですが、この映画の出演者として撮影現場の空気感からでなければ生まれないものもあるんじゃないかと勝手に思っています。その主人公としてのある意味で架空ではあるけど、でもリアルな存在から発せられた言葉とメロディのさりげなさが耳に心地いいです。
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